Technical Demo

ピーク数を決めずに、FT-IR差分スペクトルのピーク有無と帰属候補を自動整理

公開FT-IRデータを用い、K=0、つまりピークなしモデルを含むベイズ推論により、重畳バンドの分離、ピーク数の不確かさ、既知振動領域に基づく帰属候補の整理を行いました。

このデモで分かること

FT-IR差分スペクトルでは、ピークの重なり、背景変動、負方向バンド、ピークが存在しない領域が混在するため、手動フィッティングではピーク数や初期値の選び方に結果が左右されやすくなります。 本デモでは、公開FT-IRデータに AutoStatSpectra を適用し、ピーク数Kを固定せず、K=0モデルも含めて比較することで、ピーク有無、重畳バンド、ピーク位置、帰属候補を不確かさ込みで整理しました。

このページでのKの意味

Kは、モデルが仮定するピーク成分数です。K=0は「ピークを採用しないモデル」を意味します。本手法では、K=0, 1, 2, ... の候補を比較し、それぞれのモデルがどれだけ支持されるかを事後確率として評価します。

事後確率は、比較したモデル候補の中での相対的な支持度であり、物質同定の確率そのものではありません。

AutoStatSpectraによるFT-IR Si-O-Si領域のピーク分離結果

手動フィッティングで起こりやすい課題

  • ピーク数を先に決める必要がある
  • 初期値により局所解へ収束する可能性がある
  • 小さなピークと背景変動の区別が難しい
  • 「ピークなし」の説明が目視判断になりやすい

AutoStatSpectraでの扱い

  • ピーク数を事後確率に基づいて比較
  • K=0モデルでピーク非検出も評価
  • 背景とピークを同時に推定
  • パラメータとモデル選択の不確かさを出力

本ページは、Zenodo公開データを当社が再解析した技術デモです。顧客事例、半導体工場の実検査データ、共同研究成果ではありません。データ作成者、論文著者、出版社によるAutoStatSpectraの推薦または共同実施を示すものでもありません。

解析結果の要約

帰属は「物質の一意同定」ではなく、FT-IRの既知振動領域に基づく結合・構造変化の候補として扱います。

ROI 選択K 事後確率 主な結果 帰属候補
After HF - Before HF / Si-H K=1 82.0% 2098.51 cm-1, FWHM 68.52 cm-1 Si-H / Si-Hx伸縮振動
After Sandwiching - Before HF / Si-H K=0 99.2% ピークを採用しないモデル Si-H領域の明確なピークなし
After Oxd - Before HF / Si-H K=0 98.9% ピークを採用しないモデル Si-H領域の明確なピークなし
After Sandwiching - Before HF / Si-O-Si K=6 35.4% 973.15, 1034.25, 1076.50, 1146.82, 1229.90, 1248.10 cm-1 Si-O-Si非対称伸縮、酸化膜ネットワーク
After Sandwiching - Before HF / C-H K=7 67.0% 2849.90, 2855.16, 2861.67, 2917.33, 2917.94, 2921.40, 2960.85 cm-1 脂肪族C-H伸縮領域の負差分バンド

自社データで確認したい場合: FT-IRスペクトルCSV、差分スペクトル、ROI範囲をもとに、ピーク数Kの事後確率、ピーク位置、FWHM、面積、背景、フィッティング図、帰属候補表を返す解析テンプレートを設計できます。

適用できる課題例と入出力

適用できる課題例

  • 処理前後の差分スペクトル比較
  • 薄膜・界面・表面処理のピーク変化解析
  • 重畳バンドの分離と肩構造の整理
  • ピーク有無判定と手動条件の属人化低減
  • 複数試料・複数条件のバッチ解析

入力

  • FT-IRスペクトルCSV
  • 処理前後の差分スペクトル
  • 解析したいROI範囲
  • 背景関数、ピーク関数、ノイズモデルの指定

出力

  • Kごとの事後確率
  • ピーク位置、FWHM、面積
  • 背景・フィッティング図
  • 既知振動領域に基づく帰属候補表

対象データと解析条件

Si/SiO2界面水素化に関する公開FT-IR rawデータ VZ3_045_021_CVUT_D_0008_v1.csv から、Before HFを基準にした差分スペクトルのROIを5本切り出して解析しました。

データ出典

AutoStatSpectra解析条件

ピーク関数はGaussian、背景は線形モデルとし、SMCによりKごとのモデル事後確率を評価しました。

解析条件の詳細
  • Engine: SMC, sample_num: 100000, burn_in: 0
  • smc_m_pop: 80, particles: 1250
  • Background: Linear, Peak function: Gaussian
  • Noise: Gaussian
  • C-H領域のみ負方向バンドを符号反転してフィットし、結果は元の負符号で解釈

本ページでの改変内容: FT-IR rawデータからのROI切り出し、差分スペクトルのピーク分離解析、C-H領域の符号反転、図表化、帰属候補の整理。元研究の材料科学的結論を置き換えるものではありません。

ピーク数の事後確率推定とフィッティング結果

Si-H領域: After HFのみK=1を支持

After HF - Before HF のSi-H領域では、K=1が事後確率82.0%で最も支持されました。一方、After SandwichingとAfter Oxdでは、同じSi-H探索範囲でK=0がそれぞれ99.2%、98.9%で強く支持されました。

ピーク有無の判断: After HFではピーク候補を採用するK=1が支持され、After SandwichingおよびAfter Oxdではピークを採用しないK=0が支持されました。ピークを無理に作らない判定を、同じ推論フローで扱っています。
After HF K=1 82.0%
After Oxd K=0 98.9%
Sandwich K=0 99.2%
HF処理後Si-H領域のK=1フィッティング結果
HF処理後Si-H領域のK=1モデル。2098.51 cm-1付近のピーク候補が支持された。
酸化後Si-H領域のK=0フィッティング結果
酸化後Si-H領域のK=0モデル。ピーク成分を追加しない線形背景モデルが最も支持された。

Si-O-Si領域: 広いバンドと肩構造を分離

After Sandwiching - Before HF のSi-O-Si領域ではK=6が最支持でした。ただしK=4が31.3%、K=5が25.4%、K=6が35.4%と近いため、物理ピーク数を断定せず、広いバンドと肩構造を説明する統計モデルとして扱います。

K=4 31.3%
K=5 25.4%
K=6 35.4%
その他 7.9%
Sandwiching処理後Si-O-Si領域のK=6フィッティング結果
Sandwiching処理後Si-O-Si領域のK=6モデル。強い主バンドと高波数側の肩構造を複数成分で表現している。

C-H領域: 負方向バンドを符号反転して評価

C-H領域では元の差分スペクトルで負方向のバンドが支配的だったため、符号反転してフィットしました。K=7が67.0%で最も支持されましたが、K=8も19.2%の支持を持つため、7本すべてを独立した物質ピークとは断定しません。

K=7 67.0%
K=8 19.2%
その他 13.8%
Sandwiching処理後C-H領域のK=7フィッティング結果
Sandwiching処理後C-H領域のK=7モデル。元データでは負方向のC-H差分バンドとして解釈する。

ピーク分離・帰属候補整理のデモを依頼する

自社のFT-IR、XPS、ラマン、XRDなどのスペクトルデータに合わせて、ピーク数推定、ピーク有無判定、帰属候補整理の解析フローを試作します。

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まとめ

本事例では、公開FT-IR差分スペクトルにAutoStatSpectraを適用し、重なったバンドのピーク分離、K=0を含むピーク有無判定、ピーク位置に基づく帰属候補整理を行いました。

Si-H領域ではAfter HFのみK=1のピーク候補が支持され、After SandwichingおよびAfter OxdではK=0が強く支持されました。Si-O-Si領域とC-H領域では、分離数の不確かさを事後確率として確認しながら、広いバンドや負差分バンドを統計モデルとして整理しました。

FT-IR、XPS、ラマン、XRDなどのスペクトルデータに対して、ピーク分離、ピーク数推定、パラメータ推定、不確かさ評価を組み合わせた解析テンプレートを構築できます。

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スペクトルデータのベイズ推論による自動解析をご提案します。

  • 装置・データ形式に合わせた解析テンプレートの整備
  • 既存解析プロセスとの並行検証
  • 解析レポートと図表の自動生成
  • 研究開発・品質管理・プロセスモニタリングへの組み込み
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